予想はできたとはいえ、思ったより早く始まったAdobeソフトウエアのクラウドへの移行。
現在、CSを使っているユーザーのためにAdobeクラウドについてまとめてみました。特にDTP関連のユーザーに参考にしていただければと思います。
Creative Cloudとは
Adobe Creative Cloudでは従来のようにAdobe製品を購入するのではなく、月額使用料金を支払う形でAdobe製品を使用します。これにオンラインストレージサービスを加えることで、クラウドの名称を用いています。
Creative Suiteは現行のCS6が最終バージョンになります。以降は6/18に発売のCreative Cloudに切り替わり、アップデートはバグ修正とセキュリティ対応のみ、CS6.5・CS7の発売はありません。
Creative Cloudでは2台のクライアントまで同時にインストールして使用できます。
基本的に同じユーザーが使うことが前提ですが、従来のようにMac版・Wind版の区別はなく、両方にアプリケーションをインストールできます。また、従来のライセンス認証のように同時起動も可能だと思われます。
現在のAdobe CloudはCreative Suite 6(CS6)ですが、次期バージョンCreative Cloud(CC)がリリースされます。これまでのMaster Collectionが基本となり、以下の全アプリケーションが使用できます。
Photoshop CC・Illustrator CC・InDesign CC・InCopy CC・Flash Pro CC・Dreamweaver CC・ Premiere Pro CC・After Effects CC・ Audition CC・SpeedGrade CC・Prelude CC・Adobe Muse CC・Adobe Edge Animate CC・Adobe Bridge CC・Adobe Media Encoder CC
すべてがクラウドになるか?
主要アプリケーションはクラウドに移行しますが、AcrobatやPhotoshop Lightroomといった一部については従来どおりの販売も継続されるようです。
また、かなり割高ではありますが、Creative Cloudといったパック製品の他に単体製品のサブスクリプション(1アプリケーションごとの契約)も可能です。
年間契約 2,200円/月(年額/26,400円)
月間契約 3,200円/月(年額/38,400円)
Creative Cloudの種類
アドビのクラウドサービスは個人向けや企業向けなど3つのバリエーションが用意されています。すべてのCreative Cloudサービスではオンラインストレージが提供されます。
個人版
個人ユーザー用。AdobeクラウドはAdobeIDに紐付けされますが、1つのIDで同一クラウドサービスを複数契約することはできません。個人版では年間契約のほか、単体サブスクリプションと同様に月ごとの契約も用意されています。20Gの容量のストレージサービスが付きます。
年間契約 5,000円/月あたり(年額/60,000円)
月間契約 8,000円/月(年額/38,400円)
※年間契約は契約開始時から30日以降に解約すると、キャンセル料金が発生します。
グループ版
中小規模事業者向けとなり、1ライセンスにあたり、年2回のサポートを受けることができます。ライセンスの総合的な管理機能や100Gのストレージ容量を持つものの、基本的なアプリケーションの機能に差はなく、いわゆるバリューライセンス的な要素もありません。
年間契約 7,000円/月あたり(年額/84,000円)
エンタープライズ版
100ライセンスを超える大規模な企業や教育・行政機関での導入を想定したサービスです。
料金は規模や内容により、都度見積もりという形になるようです。
Creative Cloudの必要なシステム要項
必要システム
Macintoshの場合は基本はOS10.8となるようですが、以下のアプリケーションはOS10.6.8に対応
Extension Manager
Illustrator CC
InCopyR CC
InDesign CC
Adobe Muse CC
ちなみにPhotoshopは10.7以降です。アプリケーションごとの詳しい動作条件は下のサポート情報をご覧ください。
アドビ製品の必要システム構成リンク一覧
旧バージョンとの互換性
CS6への書き出し機能を備えたアプリケーション
Photoshop
InDesignR(CS4まで書き出し可能)
Illustrator(Illstrator形式であれば、CSシリーズで対応可能)
FlashR Professional
DreamweaverR
ダウングレード
現行のCS6が最古バージョンとなり、クラウドユーザーであれば、新バージョンが登場してもダウングレードできるようです。
バージョンアップキャンペーン情報
2013年5月時点でのアップグレードキャンペーン情報です。
○CS3ユーザー優待アップグレード
個人版 5,000円→3000円(終了期間未定)
グループ版 7,000円→4000円(8/31まで)
○CS6ユーザー優待アップグレード
個人版 5,000円→2,200円(7/31まで)
※いずれも、初年度1年間のみ適用です。2年目以降は左の価格となります。
まとめ
個人的な見解ではコンシューマや大手企業はともかく、小規模のDTP事業者にとっては少々酷なシステムだと思います。
もともと、主要なアプリケーションはPhotoshop・Illustrator・InDesignであり、オペレータによってはこの3つでさえ、すべてが必要ではありません。アドビとしては中小事業者(法人)用としてグループ版を用意していると思われますが、10台程度のライセンスなら容易に管理できますし、100GBのストレージといっても、データは社内で保管するのが基本でしょう。また、サポートに関してもわずか年2回ということであれば、なきに等しいと思われます。
それでいて、月額使用料は5,000円に対して7,000円と1ライセンスあたり月2,000円(年額24,000円/10台なら240,000円です!?)も高いのです。実際のところ、グループ版にはほとんどメリットを見いだせません。
結論として、小規模事業者であれば、個人用の導入がおすすめです。アドビにも確認しましたが、法人だからといってグループライセンスを使用しなければならないというわけではありません。ただし、1つのAdobeIDに対して、1つのクラウドサービスしか契約できませんので、社内で複数のAdobeIDを取得する必要があります。(基本的にはメールアドレスが違えばOKだと思われます)
日本のDTPにおいて、Adobeのシェアを支えたのは大手の印刷製版会社だけではありません。海賊版の損害も甚大ではあったと思いますが、小規模の印刷・デザイン会社などの存在も大きかったと思います。
過去にはAdobeがレイアウトソフトとして、InDesignを低価格でリリースする中、我が道を行ったQuarkXpressが業界スタンダードの地位をあっさり明け渡してしまったという経緯もあります。
また、とくにDTP業界では新しいアプリケーション=業界標準ではなく、あくまでも出力環境までトータルに考える必要があります。このため、必要最低限のセット導入により、今後の動向を見守る必要があるように思います。